大学について 早稲田大学の事例

1.通学

 自宅の最寄り駅から、池袋を経由して高田馬場へ。大半の学生はそこから東西線を利用して早稲田駅まで行くが、僕は高田馬場駅から歩くことをすすめる。約20分程度。高田馬場や早稲田はいわゆる「大学街」であり、早稲田通りには古本屋がたくさんある。それを利用しない手はないだろう。そもそも朝の東西線は激混みなので、1駅のために乗るのは電車賃の無駄。健康のためにも歩こう。

2.授業

 早稲田大学は日本有数の総合大学であり、数えきれないほどの学者が教員として所属している。政治経済学部に関していえば、我が校OBの田中愛治総長が学部長を務めた間に行った改革により、教授・准教授クラスの教員の7~8割が海外大学(特にアメリカ)で修士号や博士号(Ph.D.)を取得しているという、文句なしの陣容である。なんと採用時に、日本語で行う講義を英語でも行う能力があることが条件になっている。海外志向の高い人にはたまらない環境だろう。政治学と経済学に限って言えば、おそらく早稲田はライバルの Kを圧倒している(プロパガンダではない)。また、興味があれば他学部の授業にいくらでも潜れることも大きな魅力だ。というより、潜りたくなる授業がたくさんあるのだ。ネット上で公開される「シラバス」というものを使えば、必ず自分の興味ある授業を見つけることができる。

 政経の1年次はほとんど必修で埋まる。「消化」という言葉が最もよく当てはまる1年間だ。2年次以降は自由に決められる。他学部は1年次から比較的自由に科目を選べるらしい。2019年度入学から政治学科は経済学の入門科目が、経済学科は政治学の入門科目が必修となっているため、注意。政経は英語の授業が多い。具体的には、英語 Reading やAcademic Writing 云々というものだ。授業自体も英語で行われるため、英語からは逃れられない。というか、政経においては英語の勉強を続けることは当然だ(他学部は……)。あと、100人単位の大講義の授業では、前方に座った方が良い。後ろの方は、ネットでよく書かれるようにまさに「動物園」という感じ。

 授業の内容は、教員による、としかいいようがない。各講義の充実度の差はかなり激しい。見分け方のコツとしては、学生の団体が自主的に出している『マイルストーン』なる情報誌を読むか、早稲田大学研究者データベースで教員を検索するのがよい。『マイルストーン』は掲載の代償として各サークルから情報を集めることで成り立っているため、必ずしも信頼できるわけではない。研究者データベースを見る際は、7年以上論文を出さず、何のプロジェクトにも参加していない教員がいたら注意。怠惰で授業の評判も悪い教員か、研究より教育に全振りしている教員かの2択、天国か地獄。つまらない科目は、自分で勝手に勉強すればよい。つまらないと思ったら、少し耐えて、それでも駄目だったら、単位を落とさない程度に出席し、図書館で映画を観よう。

 成績評価に関しては、学年が低い内はレポートではなく試験が多い。政経や法は試験が多い気がする。文と文化構想はレポート中心。最高だね。政経に入って1年目の武蔵生が苦労しそうなことはやはり「出席」である。特に1年次は少人数授業が多いため、つべこべ言わず出席。忌まわしき文科省の規定により、授業回数の3分の2以上は出席しないと自動的に単位を落とすことになる。試験の内容に関しては、特記することはない。だって試験だもの。政経の場合、過去問は3年分ホームページで公開されるので、法学部の学生のように「過去問集めのためにサークルに入る」などというしょうもないことをしなくてよい。評価の基準は、教員によってバラバラ。まぁ武蔵の教師と同じです。留学を考えている人は、1年の内から高い成績を取っておいた方が良い。国際教養学部の帰国子女の人たちに負けるので。

 履修のコツとして、自分が興味ある科目や好きな教員の授業、つまり「本気で取り組みたい授業」と、単位を取りやすい科目、いわゆる「楽単」をバランスよく選ぶことをすすめる。僕はもちろん楽単という言葉は大嫌いだが、内容がハードな授業や評価が厳しい授業ばかり取るとかえって後悔することになる。また、どんな楽単であっても興味のない授業は取らない方がよい。モチベが低下した時に、興味がないと本当に終わってしまう。

3.時間割 休み時間の過ごし方

 時間割を決める際は、1限の授業をなるべく入れないことと、1つも授業が入っていない日である「全休」を作ることが大切だ。先ほども言及した「本気で取り組みたい授業」であれば1限でも取るべきだが、そうでなければ避けた方がいい。15回の授業の内、5回寝坊したら終わってしまうので…。また全休に関しては、勉強やバイトにまとまった時間をとることができるのですすめる。

 僕は休み時間はたいてい図書館にいる。休み時間といっても、大学での休み時間は10分のこともあれば何時間もある場合もあるので一概にはいえない。短い休み時間は授業間の移動で終わる。2時間以上の長い休み時間があるときは、図書館のAVルームに行って映画を観たり、早稲田松竹という映画館に行って映画を観る。近くの喫茶店に入って本を読むこともある。とはいえ僕はあくまでレアケースで、多くの学生は各学部棟にある「学生ラウンジ」でグダグダしたり、図書館で寝ている。カラオケが好きな人は近くのカラオケBan Ban を利用するといいと思う。

4.学校行事

 11月に早稲田祭がある。サークルに入っていれば関わるが、サークルに入っていない人はノータッチ、という感じ。関わっているのは半分程度かと思われる。音楽やダンスのサークルであれば発表を行い、普通のサークル?は飲食店を出す。大学を見学しに来ている高校生は少ない。どちらかというと他大学の人や近所の人が多い印象。運営に関わりたい人は、運営専門の団体があるので、そこにアタックするとよい。ほとんどの人が何らかの形で参加する武蔵の記念祭とは違い、参加したい人は参加する、という感じ。

5.人間関係

 大学における基本的な人間関係はサークルでできる。何らかのサークルには所属した方がいい。授業に出るだけでは、意外と友達ができない。これは個人的問題なのかもしれないが、他学部や他大学の友達に聞いてもそのようなことを言っている。武蔵では8時20分~15時まで同じメンバーで授業を受けるが、大学では90分の授業が終わると別の授業へ移動するため、授業外での関わりが薄い。「一緒に出掛ける」レベルの友達はなかなかレア。政経の場合、少人数授業で、偶然みんなが仲良くなれそうな雰囲気のクラスだったら、そこで友達を作っておいた方がいい。

 ただ、これはあくまで僕の持論だが、大学においてそこまで友達は作らなくていいと思う。もちろんある程度の友達は作った方がいいが、交友関係を広く持ちすぎてもあまりいいことはない。多くの学生が車の免許を取るので、土日や長期休暇が外出三昧になってしまう。自分の興味のあるサークルや、バイトや趣味を通じて学外に交友関係ができればそれでいいと思う。特に早稲田大学は万単位の学生がいるため、交友関係は流動的で、1年の最初から焦って友達探しをする必要は全くない。

6.留学

 早稲田大学、特に国際教養学部や政治経済学部のある早稲田キャンパスでは留学生の存在が当たり前になっている。毎日のように3~4言語での会話が耳に入ってくる。もちろん、早稲田から海外へ留学する人も数えきれないほどいる。留学先の多様性も豊かだ。早稲田には留学センターという組織があるので、そこでいくらでも情報収集できる。人気留学先は選考がかなり厳しいが、選択肢はいくらでも用意されている。

 1年間の長期留学は、留学開始の1年前に選考が行われる。したがって早い段階から準備が必要だ。もちろん高い成績とTOEFL-iBTの高得点も求められる。長期以外にも様々な留学プログラムがあるが、短期の語学留学に関しては、十分な下調べが必要だ。なぜなら、特にアメリカやカナダの大学への短期語学留学は、「現地へ行っていざ授業が始まったら、日本人ばかり」という場合が多々あるからだ。これでは留学の意味がない。留学の醍醐味とは「異世界に身を置くこと」である。日本人ばかりの環境で英語を学ぶのであれば、それは早稲田の授業で実現できることだ。それに高い金を払うくらいであれば、アメリカやイギリスで一人旅をした方がよい。なぜなら、一人旅では英語を話さないと「生活できない」からだ。そのような環境に身を置けば、1週間もあれば自然と耳も口も慣れてくる。もちろん、充実した短期語学留学もある上、ホームステイをできる場合もあるので、そこは誤解のないように願いたい。

 海外からの留学生と関わりたい人は、政経の建物である3号館にICC(Intercultural Communication Center)という団体が入っているので、訪ねてみるとよい。留学生の数が多いとはいえ、中国と韓国以外の国から来た留学生と普段の授業で知り合うことはまずないので、ICCのような団体に関わるとおもしろいだろう。

 ここからは自分語りになってしまうが、大学にいる間に海外旅行や留学は絶対に経験した方がよい。僕は1年次の8月にボストンとニューヨークを旅行し、新型コロナ発生後の2月にモスクワ国立大学で10日間ロシア語を学んだ(これは早稲田の正規プログラムではない)。ボストンではハーバード大学とMITに行き、モスクワではモスクワ国際関係大学、モスクワ国立大学、モスクワ市立教育大学の学生と交流した。そこでやはり実感したのは「大学では、勉強することが当たり前」という感覚、雰囲気である。一般的に、日本の大学では自ら積極的に探し出さないとそのような環境には身を置けない(僕はかろうじて発見できた)。旅行先にある大学を訪れたり留学したりすることで、日本に帰ってきた後の大学生活は、「サークル-バイト-授業」の魔の三角形から抜け出た、いい意味で充実したものとなるだろう。近年日本はどんどん内向きになってきているので、学生が世界に開かれた広い視野を持つことは大切である。