Imagine The Future 大学のゆるやかな日常

1.広大なキャンパスに向かうには自転車必須?

 筑波大生は入学前に自宅通い(いわゆる宅通、「た苦痛」ともいわれる)とつくば在住の2つの選択肢を迫られるわけだが、まず宅通の通学事情をお伝えする。

 宅通といっても茨城県内からバイクや車で通学する学生もいるが多くは東京、埼玉方面からのつくばエクスプレスからバス、または自転車を用いた通学だろう。最寄り駅は終点つくば駅、快速に乗れば秋葉原-つくば間を時速130キロのスピードで約45分で運んでくれる。(現在朝の快速電車が消失し宅通勢は発狂)朝の電車内は下り電車といえど、研究都市に向かうビジネスマンと筑波大生で徐々に混みあい、つくばに着く頃には結構な込み具合になる。45分後目を覚ますと広大な平野に広がる田園風景が目に入りつくば駅に到着する。

 大学校舎まで駅からバスで行くことも可能だが、バス停には長い列ができ1度に乗れない可能性がある。乗れたとしても朝は道路が混んでいるためバスが全く動かず授業に間に合わないなんてこともざらである。遅刻理由がバスが遅れましたとは残念過ぎる。やはりお勧めは自転車。私もそうだが駅から自転車を使う学生は駅にある有料の駐輪場を借りている。自転車のほうが朝はバスと同じくらい、ともすればバスより早く学校に着くことができる。(但し雨の日は自転車勢がバスを使うためバス停はさらに長蛇の列になり、時間をずらすか無理やり自転車で行く学生もいる)不便な点を挙げるとすれば筑波大学はキャンパスが広大な為、駅から一番遠いエリアに行くのには自転車だと25分程度かかりそれだけで体力が削られる点だろう。

 つくば在住の学生は、ランニング通学で頑張っている人も見かけるが大半が自転車通学だろう。キャンパス内はペデストリアンデッキというほぼ信号のない快適な歩行者、自転車専用道路が整備されているが朝は自転車で渋滞、校舎前は自転車であふれかえるという筑波大特有の風景も必見である。

2.総合大学だからこそ

 1限開始は8:20、6限は18:00に終わる。

 筑波大学には23の学類(他大学でいう学科)があり、芸術、体育から文系理系に至るまで幅広い分野が設けられている。東大の教養学部のようなものはなく1年生の時から学類配属となるため受験時に学群(他大学でいう学部)を選ぶ必要がある。

 次に授業について特筆すべき点を紹介したい。

 まず少なくとも1年生は体育が必修である。体育必修の大学は数少ないと思うが、さらにこの大学には日本でもトップクラスの体育教員がいて、中には元オリンピアンであった教員の方々も所属している。球技や武道など様々な競技から選択をしその競技のプロフェッショナルから教授していただくのは有意義な経験だと感じる。(サークル以外での1週間に1度の貴重な運動にもなる)

 一般的な時間割は文理でだいぶ異なるが、自分の学類の授業だけでなく他学類の授業も受けなければならないカリキュラム設定になっていることがある。つまり理系であっても文系の講義をいくつか受けなければならない。その逆もしかり。裏を返せば興味のある分野であれば学類が異なっていても受講できるということだ。筑波大は体育・芸術専門学群も有する数少ない総合大学だ。ここで筑波大学の学類の多さが大きなメリットとなり積極性をもって専攻と関係のある他分野の知識やそれ以外の自らの知見を幅広く身に着けることができるのだ。特に専門導入科目という各分野の基礎的な内容を学べる講義が数多くあり、これは先述の理由から時間割が許す限り受けたほうが良いと感じ、現に私も受講していた。

 成績のつけ方はその教授次第だが、この1年で感じたことは理系はいわゆる試験というものが多いため、試験1,2週間前から試験勉強に打ち込み、試験期間中がピークということが多い。一方文系学類は試験もあるがレポート課題での成績評価も多いようだ。普段の授業からレポート課題が出ることが多いため試験期間中に地獄を見るというより試験前までに終わるが学期を通して課題に取り組むという印象だ。(もちろん例外もある)レポートはmanabaという先生からの資料データ配布やアナウンスが確認できるログイン型のサイトで提出するのが一番多い。たまたまmanabaを開いたらレポート提出期限が今日でしたなんていう恐怖も味わうことがある。一年生のうちは数学などの科目に関しては手書きのレポートで直接講義中に提出のこともある。

3.教室移動は一苦労

 筑波大学は駅から近い順に春日エリア(主に情報系)、医学エリア、体育芸術エリア、第1,2,3エリアと分かれている。もし第3エリアから次の講義のある春日エリアに移動するとなると自転車で約15分以上はかかるため15分休みのうちに移動は厳しい。雨の日は特に自転車が使いづらいので授業に遅刻する可能性は近くの校舎であっても高くなる。ある授業で教授に「前の講義が遠すぎてこの講義に遅れてしまう人は教えてください」と言われた時、そんなことがあり得るのかと衝撃的だった。

 このため、教室移動を含む大学内での移動は基本学生は自転車を利用する。

 通学のところでも書いたが15分休み大移動と駐輪場あふれ返りはもはや日常である。

4.昼休み

 講義間は15分、2限と3限の間に50分の昼休みがある。15分休みは教室移動に勤しむので基本的に暇じゃない。昼休みに食事をする場所は各エリアにあるがごった返すのは想像に容易い。第三エリアの名店街といわれる様々なジャンルのお店が並ぶ場所は特に人気で2限が終わってもたついていると座る場所はないことが多い。春秋の季節の良い晴れた日はパンやお弁当を買って中央図書館前の噴水広場や芝生で食べている人もいる。この芝生の上でカップルがくつろぐことを「しば充」というらしい。もちろんご想像の通り…、「芝生の上でリアルに充実」のような意味かと。

 先述した食堂以外にも筑波大学の昼ご飯事情をご紹介する。

 いわゆる一般的なリーズナブルな定食や丼が食べられる食堂はすべてのエリアにある。特徴的なお店といえば1つめは「粉とクリーム」通称こなクリ。こなクリはカフェ&ベーカリーで第2エリア、第3エリア、体育芸術エリアにそれぞれある。切り株のような大きなフレンチトーストが人気で、大きくて安いので甘党の人にとってコストパフォーマンスは最高、その他にもサンドウィッチや総菜パン、揚げ物なんかもありちゃちゃっと済ませたいときは味もコスパも安心安全なこなクリにはいつも学生が集まっている。パン以外にもパスタやドリアのイートインが可能。

 2つ目は第2エリアや第3エリアにあるムスリムの学生向けのレストランである。もちろん誰でも利用でき、ほかの食堂に比べると値は張るが異国文化漂う昼食がいただける。

 3つ目は図書館内のスターバックス。とはいっても日本人より留学生が多く利用している印象がある。(日本人は金欠?)昼時でもそこまで混んでいないのでお金に余裕があってたまには行ってみるかと思ったときに行くのが良い。いやしかし昼食でスタバを利用するのはリッチ大学生だ…。

5.三大行事

 筑波大の行事は大きく分けて3つ、ヤドカリ祭、スポーツデー、雙峰祭。

 ヤドカリ祭は主に新入生が屋台を各クラスで出したり神輿を作ってねり歩いたりする。入学して一番最初の行事であるが屋台の企画から販売までほぼすべてクラス内で行うので、これでかなり親睦が深まる。去年はタピオカの屋台が乱立していたが売り上げは相当なものだったらしい。原材料の入荷なども自分たちでやるため、黒字を出さないとそのまま自分たちに金銭的負担がかかってしまう。しかし、そこまで心配する必要はなく学類の先輩や先生たちも購入してくれるそうで黒字になることが多い。黒字額が大きいところはその後焼き肉に行けるとか行けないとか…。

 スポーツデーは委員の学生たちが企画する任意参加の体育祭のようなもの。エントリー制のサッカー、バレーなどの球技のガチ試合が行われるブースと飛び入り参加可能の緩めだがユーモアにあふれたブースがある。友達を誘ってエントリーするのも良し、サークルで飛び入りで楽しむのも良し、自宅でゆっくりするのも良し。

 雙峰祭は1年を通して最も盛り上がるイベント。いわゆる学園祭だ。ヤドカリ祭とは違いサークルや部の出し物がメインとなる。普段どんな活動をしているかわからないサークルを見る良い機会となる。記念祭のような出席システムはないので参加しなくてもよいが特に芸術専門学群などは自身の作品を展示していたりとてもおもしろいのでサークルに所属していなくても足を運んだほうが良い。

6.やはり一番は住環境

 筑波大生の大半はつくばに住居をおいているがその内訳は大学の宿舎寮に入るかまたは大学周辺アパートを探すかである。宿舎の個室の広さは約6畳でトイレ、キッチンなどは共用。実際に住む友人に聞いてみるとメリットはまずその圧倒的な安さである。水道光熱費の基本料金は大学負担なので月15000円ほどで暮らすことができる。新入生は4割ほど入るため慣れない筑波生活で同じ学年の人たちが同じ宿舎に住んでいるというのは安心感があるし友達も作りやすいというメリットももちろんある。宿舎よりは高いがアパートよりは安いグローバルビレッジという海外交流を目的にしたシェアハウスが並ぶちょっとしたエリアもある。ここはまだできたばかりで建物の外装も中の施設も大変きれいで毎年入居希望者が多く抽選になる。

 大学の外に住処を見つけるのもそこまで心配はいらない気がする。ほぼ筑波大生のための不動産屋もあり大学周辺には手ごろなアパートがかなりの数建っている。アパートに住むメリットとしては住環境の良さが一番だろう。宿舎だとどうしても個人の空間が狭くなってしまうがアパートだと十分なスペースを確保できる。また家に友達と集まって遊んだり、試験前には勉強したりできるのは大きな利点である。デメリットは場合によっては引きこもりがちになり外との接触が少なくなる可能性があることだろうか。

7.サークル

 筑波大には大学から認可されたサークルや部だけで137、認可を受けていないものまで含めると250近く存在する。ここでそれぞれのサークルを取り上げることはできないので、新入生がサークル選びに勤しむ筑波大の新歓期を紹介する。例年入学式当日に新歓祭という大半のサークルが参加する大きなイベントがある。ここでは第1エリアから第3エリアにかけて新入生を勧誘するために多勢の2,3年生が待ち構える。人だかりを抜けるころには両手はサークルのビラでいっぱいになる。芸術系(歌や楽器を用いるサークルなど)のサークルなどは教室でブースを設けて、実際に腕前を披露して新入生に魅力を伝えている。全国の大学の新歓期の醍醐味は先輩たちにご飯をごちそうしてもらえることだろう。

 筑波大でももちろんあるが、飲食店が徒歩圏内にないことが多いので自転車移動、もしくは先輩が車を出してくれることがある。ご飯新歓が終わるのは夜遅くなるわけだが都心の学校だと駅で解散でよいところ、つくばだとそうはいかない。最初のうちは自分がどこにいるのかすらわからなくなってしまう。入学当初は陽が落ちてからの大学敷地内のあまりの広さと暗さに帰る方向を間違える1年生も少なくない。そのため、新歓後は先輩たちが宿舎や学校周辺の各地区、またはつくば駅までついてきてくれることが多いのでその点は安心である。4月の夜10時頃になると2,3年生を先頭に大量の自転車集団をよく見かけるがそれは新歓帰りだろう。毎日どこかしらご飯新歓があるので、新入生にとっては食費を浮かせるために新歓を渡り歩く1か月となる。

8.時給の安さに負けない

 現地でバイトをするとなれば塾の講師か、飲食店のアルバイトが一番多いだろう。隣駅には大きなショッピングモールがあるのでそこで映画館のバイトやアパレルのバイトをすることも可能だと思う。また農業ヘルパーといった収入源もある。つくばは(田舎なので)駅から少し行くとすぐに畑が広がっていて野菜や果物の農家さんが点在している。その農家さんの下で農作業をアルバイトという形でするのが農ヘルである。日本や世界の農業生産や開発の研究を学ぶ生物資源学類の学生も多いらしく、バイトをしながら農業とも接することができる。

 大学内での研究の手伝いといったバイトもある。よく心理実験などのデータをとるための募集もがあり、手軽さで考えたらもってこいだろう。

9.留学

 留学については数通りあるがその中にCampus in Campusという制度がある。この制度は筑波大学と提携している海外の大学への留学であれば、授業料は筑波大学に収めているだけで良い。つまり渡航費、滞在費を除き追加料金がかからない。また長期留学をすると大学1年間休学というイメージがあるかもしれないが、この制度内だと海外での授業がそのまま筑波大学での取得単位数に換算され、卒業単位に認められる。長期留学を考えている人はこの制度を使ったほうがメリットが大きいだろう。

 筑波大の留学に関する情報集めの手段は、年に2回ほど行われる留学フェアに参加するかグローバルコモンズという留学の相談窓口に相談しに行く2つがあげられる。留学フェアは入学して間もなく参加してみたが実際に留学に行った人から、準備の進め方や留学生活の様子を面談方式で聞けたので情報集めには大変有意義だった。大学在学中に留学したいけれどどこから手を付ければよいかわからないといった人にはお勧めである。

10.おわりに

 思いつくままに書き連ねた結果、だらだらとまとまりのない文章になってしまった。申し訳ない。筑波大は名前こそ知られているもののその立地のせいか内情を知ってくれている都内の人は少ないだろう。これを機に少しでも知ってもらえたら幸いである。