「おおお」で過ごす1年間

1.はじめに

 塾バイトを初めて数ヶ月経った頃、担当の生徒と東工大の話をしたことがある。受験を一年後に控えた高校生の生徒で、それなりに筆者の大学生活について話したことがあったのだが、なんと「東工大には理系学部しかない」ということを知らなかったのだ。(東京「工業」大学なのに!)

 このエピソードはやや極端な例ではあるが、どうも東工大は他の国立大に比べ知名度が低いというか、何をしているところなのか分かりにくい節がある。本記事ではそんな東工大の地位と知名度のさらなる向上のため、筆者の1年間の体験をもとに東工大について知っておくと良い・知っておいて欲しいことをまとめていく。

2.通学

 東工大は都内の大岡山とすずかけ台の二箇所にキャンパスを構えている。大体大岡山:すずかけ台=8:2くらいの規模感であり、6つある学院のほとんどは大岡山に腰を据えて活動している。すずかけ台は生命理工学院や物質理工学院の研究設備がメインのキャンパスで、少なくとも一年生の間はずっと大岡山で過ごすことになるので、ここでは特に断らない限り大岡山キャンパスの話をしていく。

 最寄駅は大岡山駅で、目黒線と大井町線が乗り入れている。それぞれ目黒や自由が丘といった駅と接続しているので、大規模な駅へのアクセスは意外と簡単である。周りが住宅街なのと二路線が乗り入れている関係で時間によってはかなり利用者が多いので、ある程度の混雑は我慢しよう。大岡山駅自体の規模は江古田より少し大きい程度だが、キャンパスはなんと駅の目の前である。が、キャンパスがやたらと広い上に起伏に富んでいるので時間に余裕を持った通学を心がけるとよい。

3.授業

 東工大はクォーター制を採用しており、一年を1Q〜4Qの四つに分割して授業が行われる。一年のうちはいわゆる教養課程で、どの学院の生徒も必修科目として(ほぼ)同じ授業を受けることになる。一年生は1〜80の「ユニット」に分割され、所属ユニットによって授業が決まっており教師を選んで受講することはできない上、教師によってかなり授業内容に差があるのでこの記事の内容とまるで異なる事態に直面する可能性もある点には充分注意されたい。それでは東工大の授業紹介に移ろう。

 まずは理系科目について。東工大の1年目の授業で一つ特徴的なのは、生物(「生命科学」と題して開講されている)が必修科目であることだろう。受験科目に生物がないのでしっかり勉強したことのない人が多いと思うが、とにかく暗記量が多いので心して授業を受けるようにしよう。その他の科目は教師による差が激しいので一概にこう、とは言いにくいが、おそらく数学が一番高校との差が大きくつまずきやすいので、テキストやノートでの復習に加えインターネット上の教材なども活用していくとよい。

 次に理系以外の科目について。東工大では「文系教養」と銘打って様々な文系科目が開講されており、必修科目として受講しなければならない。「専門は理系だから・・・」といって文系学問の知識を学ぼうとしないのはもったいないの一言に尽きるので、シラバスを参考にしつつじっくり履修内容を検討してみて欲しい。

4.学校生活

 最後に上記以外の学校生活全般について補足をしておこう。授業の項で触れたが、基本的に授業はユニットという単位で決定されるので、ユニット内で友人を作って授業の内容などを共有しておくと色々と楽になる。だがこのユニットは一年でしか使われない(もったいない!)ので、同じ学院かつ同じユニットに所属する友人を見つけるとよい。二年生以降は学院ごと(=専門ごと)の授業に分かれるので、その後も長くあなたの良き友人として助けになってくれるだろう。

 またキャンパスについて。やたらと広い大岡山キャンパスだが、一年の授業の大半は本館とすぐ近くの西館で行われるので移動はそこまで多くない。二箇所ある食堂もそれらの建物に近いので利用しやすいが、昼休みはとにかく混雑するので空きコマがあればそこで昼食を済ませてしまうことを強くお勧めする。

5.おわりに

 東工大の大学院進学率は9割に迫る勢いであり、学生のほとんどはいずれ研究の世界に進んでいくことになる。とはいえ東工大の学生が勉強三昧の単調な生活を送っているかといえばそんなことはなく、少し変わった人(マイルドな表現)が多いのは事実だが、各々趣味やサークル活動に燃えている。東工大のような専門性の高い大学で特に顕著だが、大学生活の特徴はそのカスタマイズ性の高さにあると思う。どの授業をとるか、どのサークルに入るか、どのバイトをするか、一人暮らしを始める人もいるだろう。今後の生活に関わる選択を(一年のうちは特に)次々迫られるわけである。一つ強調しておきたいのは、ここでいう「カスタマイズ性」は一度決めたことを取り消す自由も含まれることである。色々とつまみ食いしてみるという経験こそ、大学生活の醍醐味ではないかと思う。