東北大学について
1.通学
東北大学には「川内」、「青葉山」、「星陵」、「片平」の四つのキャンパスがある。この四つのキャンパスについて、各々解説していく。
川内キャンパスは1、2年のうちに教養科目の場として使用されるキャンパスで、全東北大生にとってなじみが深いものといえよう。文系にとっては、専門教育の場でもある。仙台市営地下鉄東西線の川内駅のすぐ目の前にあって、地下鉄通学及びバス通学は容易である。また自転車通学を行う者も多いが、大学のある川内地区は坂が比較的多く、授業前に自転車のせいでで疲労困憊、というハメになるのは避けたいところ。
青葉山キャンパスは工学部、理学部、農学部の専門科目が行われる場所だ。その名の通り山の上にあって、徒歩もしくは自転車で通おうなどというのは無謀。地下鉄東西線「青葉山駅」は川内駅の隣の駅であり、川内キャンパスと同様、地下鉄通学が無難かと思われる。また、原付による通学者も多い。(2015年までは東西線が開通しておらず、こちらが主流だった。)
星陵キャンパスは医学部、薬学部、歯学部専用のキャンパスで、上の2キャンパスからは距離がある。スーパーなどが充実した市街地の中にあるので、これらの学部に進学した天才諸君には星陵周辺に住む、という選択肢もアリかもしれない。交通の便はまあまあ良い。
片平キャンパスは工学部の一部研究室がおかれたキャンパス。主にこのキャンパスは事務用に存在し、通うとすれば工学部生の中でもここに所属する研究室に配属されたものくらいだと思われるので、ここでは割愛する。
2.授業
一、二年生の間は教養科目(東北大学では「全学教育」と呼ばれている)が中心となる。自身の専門科目のみならず、文理問わずいろんなことを、選択必修のルールに則って勉強していく。語学も必修であり、第二外国語などは、武蔵において勉強済みの諸君には活躍の場となること間違いなしだ。
単位はまっとうにやって落とすことは少ない。ごくまれに厳しい取得条件を提示してくる教師がいるが、留年するほど単位を落とす、という心配はしなくていい。尤も、油断は禁物であるが。
二年生の前期から専門科目を学ぶこととなる。私はまだ新二年生で、詳しいことはここでは述べることができないのが惜しいが・・・理系の場合、成績が「研究室配属」、つまりどこの教授のもとで研究をすることになるかを決定するので、まじめに勉強しよう。文系もロースクールなど勉強が就職にかかわる場面が多いので、手を抜くことはないように。
3.学校行事
武蔵は学校行事が充実した学校であったが、東北大学はそうでもない。特筆すべき行事は学園祭(「東北大学祭」。名前もうちょっと凝れやコラ)くらいで、これも出席などはないため、参加するかどうかは本人がどのサークルに加わっているか次第。運動部や運動サークルなどは飲食店を出すことが多いし、文化系は自身の専門分野の展示が中心。一番の花形は、ステージなどで観客たちを魅了する音楽系サークルだろうか。とにかくサークルによって学祭にかける熱量は大きく違う。
4.留学など
東北大学は留学関連が充実しているのが魅力の一つである。一か月ほどの短期プログラムから、一学期や一年かかる交換留学まであらゆるプログラムが充実しており、留学に当たってある程度の支援金も出してくれる。留学関連の相談窓口も存在しており、自分に合ったプログラムを見つけることができる。
この大学は海外交流そのものが盛んなのか、学内には外国人も多く、歩いていて中国人や西洋人、イスラム教徒とすれ違うことは日常茶飯事だ。ネイティブと話すことのできる場も学内にはあり、自身の語学力を試してみるのもいいかもしれない。総じて、海外志向のある人にとっては満足のいく大学だと思われる。
5.バイトについて
東北大学は地元率がとても低い大学で、東北出身すら3割程度。そのため、大半は一人暮らしであり、何かしらのアルバイトに従事する者が多数だ。部活に所属しているなどの理由で暇がないなどがない限り、社会経験の場としてバイトに参加するのはとても良いと私は考える。
バイトにも種類がある。飲食店、塾講師や家庭教師、清掃、採点、イベントの裏方など・・・。その中でも私が経験した三つほどのアルバイトを紹介する。
まずは塾講師。これは現在でも続けているアルバイトで、私は楽しめている。生徒たちの「わからない」を解決して上げ、彼らの成長を見守るという体験はなかなかに良い。人にものを教える、という立場ゆえか、同僚や上司も気さくな方が多く、人間関係で言ってもかなりいい職場だと感じた。武蔵中高に入るほどの持ち前の頭脳を生かし、ぜひこのバイトに従事してはいかがだろうか。
次は採点。こちらは模試の採点を行う、というアルバイトである。勤め先は多々あれど、主流はべ〇ッセ。進〇模試はなじみが深いだろうが、あれの採点がこういったアルバイトの場で行われているのである。仕事内容は「採点基準通りにパソコンで答案に点数をつける」というもの。簡単ではあるが、飽きる。一週間で2、30時間の出勤が求められるため、それくらいの間がんばれるという自信があればよいかもしれない。交通費が支給されないのはクソ。
最後はイベントの設営。これは単発のバイトが中心である。アーティストのコンサートを行うにあたって、舞台装置などの設営、観客の警備や誘導といった作業を裏方として行う。休日丸一日を返上して行うものであり、その対価として1万5千円ほどの給料がもらえる。あわよくばアーティストの歌声を生で聞けるかもしれない。ただ、切迫した現場のためか周囲の人たちは結構気が立っており、怒鳴られることもちょくちょくあったりする。肉体労働も大丈夫で、怒られ慣れているという人たちならば、やってみてはいかがだろうか。体を張って稼ぐという体験はしておいて損はない。
6.雑記
私の持論だが、大学生になると必ず「世界の広さ」に直面する。
高校時代までは似通った人たちとばかり交流してしまう。よほど主体的に外の世界に興味を持たない限り、かかわる人たちの属性はおおよそに通ってしまう。「俺の周りは個性ある人ばかりだぜ」なんて言おうが、所詮同じ地域の、同じような年収層の家庭に生まれた、同じぐらいの学力の者たちなのだ。特に武蔵という中高一貫男子校の場合、関わる人種は必然的に限定されてしまう。端的に言えば、高校生というのは「世界が狭い」のだ。
それが大学に進学すると、出身地も、実家の経済力も、あと性別も異なる人たちと大量に出会うことになる。アルバイトやボランティアを通じ、同世代どころか全く違う年の人たちとのかかわりあいも多くなっていくだろう。留学だって異なる人たちと関わる場のひとつだ。そんな中で、時には「こんな人たちがいたのか」とショックを受けることもあるかもしれない。
ただそんな体験こそが、あなたを確実に成長させるはずだ。世の中にはいろんな人種、価値観があって、各々にできることとできないことがある。それを知っているからこそ、いろんな人と協力したり、手を差し伸べたりできる。研究などを社会に還元しようとすれば、どうしても狭い価値観では限界があるだろう。ただ優れているだけ(いわゆる「頭でっかち」)では足りず、「こんなこともできないのか」と多くの人を糾弾するだけの狭量な人間に終わってしまう。諸君の優れた頭脳を世界のために生かすというのなら、いろんな価値観を知ることも必要なのだ。
私とて、まだ価値観は狭いままだろう。これから何十年とある人生、おそらく価値観は何倍にも広がりうるし、今の私がこうして偉そうなことを話すのは場違いにも思われる。ただ大学に進学する意義の一つとして、こういった多様性を知る、というものがある、それだけは伝えたい。
最後に、この原稿を書くにあたって協力してくれたT君、その他にも常よりお世話になっている皆様に、この場で改めてお礼を申し上げます。